ホラーゲームには、人の「恐怖心」を刺激するものと「心の奥深く」を静かに揺さぶるものがあると思っている
僕が『サイレントヒル2』に初めて触れたとき、それがどちらかなんて考えずに、ただ名作と呼ばれる作品を体験してみたいという気持ちだった
でもプレイを進めるうちに、これは「恐怖のゲーム」ではなく「感情を揺さぶる物語」なのだと気づかされていった
『サイレントヒル2』をトロフィーコンプリート(いわゆる“トロコン”)するまで、何度も街をさまよい、何度もジェイムスの物語に触れて行く中で、ただのホラーゲームじゃないことは、プレイを重ねるごとに確信に変わっていった

ホラーゲームというのは不思議で、何度も周回を重ねていくにつれて恐怖心というものが無くなっていく
恐怖心がなくなっていくと、その物語に深く入り込むことができるから不思議だ
細かいところまで見ることができるようになる
このゲームをプレイした理由のひとつは、ホラー好きとして「名作」と名高いこの作品をしっかり味わいたかったから
でもそれ以上に、どこか“引き寄せられた”感じがあった
静かで、重くて、でもどこか優しいそんな空気をまとった物語にを気づいたら4周していました
物語の核心に迫る

きっかけは、亡き妻・メアリーから届いた手紙。
「サイレントヒルで、あなたを待っています。」
現実ではあり得ないことでも、ジェイムスは妻からの手紙と違和感を抱えたまま、霧の街へ足を踏み入れる
サイレントヒルという街は、ただの場所ではなく、登場人物たちの「内面を映す鏡」のような存在だ
霧、錆びた鉄、意味のわからない化け物たち
すべてが、ジェイムスの心の闇を形にしたような風景だった
エンディングを見届けて
『サイレントヒル2』には複数のエンディングがある
「Leave」「Maria」「In water」「Rebirth」「いぬ」「UFO」「Stillness」「Bliss」の8種類のエンディングがある
プレイヤーの行動やジェイムスの精神状態によって結末が変わるが、どれも一筋縄ではいかない深みがあった
エンディング自体は短いものの、その中でジェイムスが語ることが僕に深く考えさせてくれた
「いぬ」と「UFO」はネタエンドっぽいけど、サイレントヒルということを考えたら、ジェイムスが作った幻で現実逃避をした結果なのかなとも思えたかな
中でも「In Water」は、僕が一番心に残ったエンディングだった
メアリーの死を受け入れきれず、自らも水の中に消える道を選ぶジェイムス。救いがないとも言える終わり方だけど、彼の弱さと真摯な罪の意識がにじみ出ていて、どこか「正直な結末」とも思えた
でも、やっぱりジェイムスには罪を償って生きてほしいと思ってしまう
一方、「Leave」のエンディングでは、ジェイムスは過去を受け入れ、新しい一歩を踏み出します。多くの人が“ハッピーエンド”と捉えるこのルートですが、僕にはむしろこの選択のほうが勇気のいるものに思えた
罪を背負ったまま、それでも生きていくという選択
僕が望んでいるのはこのエンディングだった
それなのに、なぜ「In Water」の方が心に残ったのかというと、自分はこの選択を選んでしまうだろうと思ったのが1番の理由だった
何度も周回しながら、ジェイムスの選択に自分を重ねずにはいられなかったんですよね
ジェイムスという人物の葛藤と選択
ジェイムスは、ただの“被害者”じゃない。むしろ、自分の罪と向き合わなければいけない“加害者”でもあるという立場だ
メアリーを殺したことへの罪悪感
それを正当化しようとする心、忘れようとする心。プレイヤーはそれを、彼のセリフや行動、出会うモンスターたちからじわじわと感じ取っていくことなる
とてもおとなしそうなジェイムスだが、クリーチャーに対してはひどく暴力的になる
クリーチャーがダウンしたら踏みつけができるんですが、たとえ死んでいたとしても過剰に踏みつけることができます
このゲームのすごさは、プレイヤーが“真相を知る”ことそのものより「その重みをどう受け止めるか」が問われるゲームだと感じた
明確な答えなんてなくて、それぞれのプレイヤーが、自分なりの理解を見つけていくしかない
エンディングが複数あり、「Leave」「Maria」「In water」はプレイヤーの行動で決まると言えるので、どれだけジェイムスに自分を重ね、自分の行動はどの結末に行くのかを見ると、また違った楽しみができる
サイレントヒル2を終わって思うこと
『サイレントヒル2』は、単なる恐怖を提供するホラーではなく、人の「心の奥」を見つめる物語だった
登場人物はみんな罪を抱えて「サイレントヒル」に来ていて、それぞれのサイレントヒルを見ていた


トロフィーコンプリートというゲーム的な目標を達成したけれど、感情的にはまだ“終わっていない”気がしてる
思い出すたびに、また街に戻りたくなる。あの霧の中で、自分の内面と向き合い直したくなる
なぜ彼はサイレントヒルに向かったのか
それは、自分の罪と向き合うため。メアリーへの想いを確かめるため。そして、どこかで「自分を許す方法」を探していたのかもしれない
「Stillness」ではメアリーに会うことができているが、ジェイムスはメアリーの方を見ることができないままでいた
きっとジェイムスを1番許せていないのはジェイムス自身なのだろうと考えさせられるエンドだった
僕たちがゲームを通して彼の旅を見届けることは、ただの“エンディング回収”じゃなく人生の中で「自分ならどうするか」を考えるきっかけになる、かけがえのない体験だったと思う